精神病院に入院中の者に対して制限できるのは|看護師国家試験113回問題解説
今日の実習中、Aさんという患者さんが急に閉鎖病棟に移ったんです。任意入院なのに何で…。
Aさん、最近不安定で死にたい気持ちがあったみたい。自由に外に出ると危険だから制限が必要になったのね。
任意入院でもそんなことがあるんですね。患者さんの意思はどうなるんですか?
確かに患者さんの意思は大切。でも安全が最優先。制限は医師の診察に基づいて指示されるのよ。
精神保健福祉法に基づく任意入院では、患者さんの権利が尊重され、開放処遇が基本となりますが、病状の悪化により安全を確保するために一時的な制限が行われることがあります。
国家試験では、こうした入院形態の違いや制限の条件について理解しておくことが重要です。
また、医療保護入院など、患者の意思に反しても治療を続ける必要があるケースに対する法的な枠組みも試験範囲として出題されることが多くあります。
この知識をしっかり身につけることで、試験対策はもちろん、臨床現場でも役立つ対応力が養われます。
第103回国家試験 午後89問
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律により、病院の管理者が精神科病院に入院中の者に対して制限できるのはどれか。2つ選べ。
1.手紙の発信
2.弁護士との面会
3.任意入院患者の開放処遇
4.信書の中の異物の受け渡し
5.人権擁護に関する行政機関の職員との電話
解答と解説
1.手紙の発信
✖ 誤り 制限できない
精神科に入院中の患者に対して手紙の制限はできません。
患者から外部の人に対する発信も、外部の人から患者に対する受信も、ともに一切の制限ができないことになっています。
2.弁護士との面会
✖ 誤り 制限できない
弁護士や「人権を擁護する行政職員」と面会することはとめることができません。
面会の制限については、治療上必要だという正当性のある理由がある場合は、本人や家族に説明の上で制限することができます。
3.任意入院患者の開放処遇
〇 正しい 制限できる
任意入院の場合でも医師の判断と指示のもと開放処遇の制限ができます。
任意入院では、他の入院形態とは異なり、開放処遇での入院生活を行うことが原則となっています。
しかし、病状によって開放処遇を制限しなければ十分な医療や保護が図れず、どうしても開放処遇を制限する必要が出ることがあります。
その場合でも指示があってから72時間以内に指定医の診察にて、開放処遇を制限すべきかどうかの判断を行う必要があります。
任意入院の患者さんが開放処遇の制限が必要なほど病状が悪化した場合は、基本的に医療保護入院に切り替えて入院を継続することが原則です。
4.信書の中の異物の受け渡し
〇 正しい 制限できる
手紙の中に異物が混入してる場合は受け渡しを制限できます。
郵送されてきたものに異物(例えば刃物や薬物など有害・危険なもの)が入っている可能性がある荷物の場合は、職員立会いの下で開封し、危険物を病院側が預かることがあります。
危険物を病棟に持ち込まないことで安全な療養環境を保っているのよ。
5.人権擁護に関する行政機関の職員との電話
✖ 誤り 制限できない
電話の制限については、手紙の場合とは異なり治療的に正当性がある理由があれば制限できます。
しかし人権擁護に関する行政機関の職員への電話は制限することができません。
患者から「処遇の問題について県の行政担当に電話する!」という要求があったら、基本的には電話をかけさせなくてはなりません。
解答のポイントまとめ
- 手紙の発信:患者が外部との手紙のやり取りは制限されません。精神科の患者でも、手紙の発信や受信を制限することは基本的にできません。
- 弁護士との面会: 患者の弁護士との面会は制限できません。人権保護のため、弁護士や行政機関の職員との接触は確保されるべきです。
- 任意入院患者の開放処遇: 任意入院でも医師の判断により開放処遇が制限されることがあります。安全の確保や病状悪化の際に、一時的な制限が適用されます。
- 信書の中の異物の受け渡し: 手紙の中に危険物が含まれている場合、病院はその受け渡しを制限できます。異物(刃物や薬物など)は病院が管理することがあります。
- 人権擁護に関する行政機関の職員との電話: 人権擁護のための行政機関の職員との電話は制限できません。患者がこの機関に電話する権利は保護されます。