【准看護師】医療現場を支える縁の下の力持ち!役割と業務を徹底解説
近年、深刻化する看護師不足。そんな医療現場を支える重要な存在として、准看護師の存在があります。
しかし、准看護師の役割や業務範囲は、看護師と比べて明確に理解されていないことも多いのが現状です。
准看護師は、医師や看護師の指示を受けながら、看護師と同じように医療行為を行う資格ですが、看護師の業務とは一部異なる点があります。
私は准看護師、看護師の両方の資格を持ち、今では経験20年を超える看護職です。
この間さまざまな医療現場を経験し、それぞれの現場での准看護師の働き方の違いについて理解することができました。
この記事では、准看護師の役割や准看護師が担当する業務・担当しない業務について明らかにし、私が経験した現場での、准看護師の具体的な働き方について解説します。
この記事を読むと准看護師という仕事に興味がある人が、その業務内容について具体的なイメージを持つことができます。
准看護師は医療行為ができる看護師のサポーター
准看護師は医療・福祉の現場を支える大切な存在
高齢化が進行するわが国において、看護師不足は多くの医療・福祉の現場で共通する課題となっています。そんな中、准看護師は医療現場を支える重要な存在です。
准看護師は、看護師と同様に医療行為を行う資格を有しています。
患者の基本的なケアや療養の世話など、看護師のサポート役として幅広い業務を担当します。
看護師と比べるとできることには制限があるものの、准看護師は医療現場において欠かせない存在です。
准看護師の定義:資格の発行は都道府県でも全国で活躍可能
准看護師とは、医師、歯科医師、または看護師の指示を受けて、傷病者若しくは妊婦に対する療養上の世話または診療の補助を行うことを業とする者であると定義されます。
(保健師助産師看護師法第5条)
准看護師は養成所で2年間の専門教育を受けたのち、都道府県知事の実施する資格試験に合格する必要があります。
免許を発行するのは都道府県ですが、資格を持っていれば日本全国どこでも働くことが可能です。
准看護師の歴史と展望:戦後の看護師不足を補い現代でも医療を支える資格
准看護師は戦後の看護師需要から発足した
准看護師制度は約70年前、戦後の急激な病院増設に伴い看護師の需要が増大した中で誕生しました。
当時の女性の高校進学率は低く、看護師の数を十分に増やすことが難しい状況から、中学校卒業を要件として看護師を補助する資格として設立されました。
時代は大きく変化し、現代の看護職には、自律的に判断し行動できる能力が求められています。
その背景には急速な高齢化の進行があります。看護職には、複数の多様な疾患を併せ持つ高齢患者の増加や、医療の高度化・複雑化、医療提供の場の多様化に対応できることが必要とされています。
しかしながら、准看護師は、看護を行うには看護師などの指示が必要な資格であり、現在の医療ニーズや国民のニーズに対応するには、教育内容、時間ともに不足していると考えられているのです。
准看護師養成の廃止の可能性はあるが即座の停止はない
このように准看護師制度は一時的な措置として開始された制度ではありますが、現在でも養成が続いています。
日本看護協会では、准看護師制度が創設された当初から一貫して准看護師養成の停止に取り組んでおり、看護師養成の一本化を目指しています。
しかし、医療現場の深刻な人手不足を背景に、看護師養成の一本化は即座に停止できる状況ではありません。
今後は看護師不足の解消に寄与しつつ、少しずつ養成の規模を縮小していく方向に進んでいくと考えられます。
准看護師から看護師へ移行する制度は、通信制過程の創設などにより、充実しつつあります。
今後は働きながら看護職に就く道が狭くなることが予想されるため、経済的な理由などで准看護師資格の取得を目指される方は、早めに行動されることをおすすめいたします。
投稿を編集 “《准看護師廃止論》本当に仕事がなくなるの?20年現場経験者が解説【前編】” ‹ かんなる — WordPress (kannaru-life.com)
【准看護師】看護師との違いは責任範囲
准看護師と看護師は同じ「看護」を専門に行う医療従事者ですが、それぞれ異なる役割と責任を持ちながら、患者の健康と回復をサポートするために協力して働いています。
看護師は、より高度な専門知識と技術を持ち、自立的に判断し、幅広い業務を担当します。
一方、准看護師は、看護師の指示を受けながら、患者のケアに集中する役割を担っています。
准看護師の役割:ケアに集中し身近な存在として患者を支える
准看護師は、看護師のサポート役として患者のケアを丁寧に提供することが求められます。患者との密接な関わりを持てることが強みとなっています。
看護師が指示や管理業務に多くの時間を割く一方で、准看護師は患者とのコミュニケーションや観察に集中できます。
患者一人ひとりのニーズを丁寧に把握し、心身ともに安心して過ごせるようサポートするのが、准看護師の仕事です。
准看護師の責任:指示の適切な遂行と異常の報告
准看護師は、医師や看護師の指示を正確に理解し、安全かつ適切に業務を行うことでその責任を果たします。
また、患者の状態を常に観察し、異常があれば医師や看護師に報告することも重要な責任です。
准看護師は、医師や看護師の指示を受けながら、患者の治療や療養を補助する役割を担っているため、責任範囲は比較的狭くなっています。
看護師の役割:高度な知識と技術でケアを提供する
看護師は高度な医療知識と技術を持ち、患者の状態を的確に判断し、適切なケアを提供することが求められます。そのため役割は多岐にわたります。
患者の状態を常に観察し、異常があれば医師に報告することで、適切な治療へと繋げます。
バイタルサイン、症状や体の状態、検査結果の分析などを通して、医師や他の医療従事者と共有することで、患者にとって最適な治療計画の立案に貢献します。
様々な能力を駆使して患者の心身の健康を総合的に支えています。常に患者に寄り添い、ニーズを察知しながら、最適なケアを提供するのが看護師の役割といえるでしょう。
看護師の責任:状況判断に基づいた適切な対応
看護師は高度な医療知識と技術を持ち、患者の状態を的確に判断し、適切なケアを提供することが求められています。そのため看護師の役割は多岐にわたります。
患者の状態を常に観察し、異常があれば医師に報告することで、適切な治療へとつなげます。
バイタルサイン、症状や体の状態、検査結果の分析などを通じて、医師や他の医療従事者と共有することで、患者にとって最適な治療計画の立案に貢献します。
さまざまな能力を駆使して患者の心身の健康を総合的に支えています。常に患者に寄り添い、ニーズを察知しながら、最適なケアを提供するのが看護師の役割と言えるでしょう。
看護師業務:看護師業務との共通点・相違点
准看護師と看護師の共通業務
准看護師も看護師と同様、「療養上の世話」と「診療の補助」が主な業務です。
准看護師は看護師と多くの共通業務を持っています。准看護師は指示を受けて、以下の業務を行うことができます。
患者の療養上の世話
- 食事介助
- バイタルサインの測定
- 入浴介助
- 排泄介助
- 清潔ケア
- 医療機器の準備
- カルテの記入 など
診療の補助
- 注射・点滴
- 採血
- 喀痰吸引
- 傷口の処置
- 医療機器の操作 など
准看護師業務と看護師業務:判断と責任に違いあり
上記のように多くの業務を看護師と同様に行うことができるのが准看護師ですが、資格の違いから、業務における判断と責任には違いがあります。
准看護師の業務における判断と責任の範囲
准看護師は、医師や看護師の指示に基づいて医療行為を行う補助的な役割を担います。患者の状態変化に気づいた場合でも、判断は看護師に委ね、指示を仰ぐ必要があります。
准看護師は、医師や看護師の指示に従って医療行為を行うため、実施した内容に誤りがない限り、責任は限定的です。
看護師の業務における判断と責任の範囲
看護師は、患者の状態を観察・分析し、医学的知識に基づいて適切な判断を下した上で、独立して医療行為を行うことができます。
看護師は自身の判断に基づいて医療行為を行います。そのため、医療事故が発生した場合、責任を負う可能性があります。
准看護師は行わない業務
准看護師は医療現場で重要な役割を果たしていますが、原則として担当しない業務もいくつかあります。
【自分の判断で】療養上の世話や診療の補助を行う事
准看護師は基本的な看護技術や知識を持っていますが、すべての療養上の世話や診療補助を自分の判断で行ってはいけません。
治療や療養上の世話についての判断は医師や看護師によって行われます。准看護師にはこれらに対する直接的な決定権はありません。
例えば、患者の状態の変化を察知した場合には、直ちに医師や看護師に報告し、その指示に従う必要があります。
自分の判断で治療や世話を行う行為は、その責任の範囲外にあり、准看護師の職務範囲を超える行為となります。
看護計画の立案
准看護師は、看護計画の立案に直接関わることはありません。
看護計画の作成は、患者の健康状態を総合的に評価し、個々のニーズに合わせた看護方針や介入を決定する過程を含みます。
この過程は専門的な知識や判断力を要するため、通常は看護師が行います。
准看護師は、看護計画に基づいて看護ケアを提供することに注力し、患者の状態や反応を観察し、報告する役割を担います。
看護計画に対する評価も看護師が行います。
他の看護師への指示出し
准看護師には他の看護師への指示出しは行いません。
看護チーム内で指示を出すことは、主に管理職やリーダーの役割を持つ看護師に限られています。
准看護師の役割は、指示に従い、患者への看護ケアを提供することに特化しています。
准看護師はチーム内で協力して動くことはできますが、看護師への具体的な業務分配や指示の発令は、彼らの職務範囲外となります。
新人看護師や看護学生などへの教育
准看護師は、後輩看護師や看護学生に対して主として教育を行う役割を担っていません。
新人教育や実習の指導は、教育担当看護師や臨床実習の専門知識を持つ看護師、または看護教員によって行われます。
そのため、准看護師は日常のケアの提供に焦点を当て、後輩看護師や看護学生に業務や患者についての情報提供を行うことはありますが、主体となって教育を実行する役割は看護師に委ねられます。
管理職
准看護師は一般的に、医療機関内の管理職を務めることはありません。
管理職としての役割は、組織の管理、看護の質の管理、人材管理、リスク管理など高度な知識と経験を必要とする業務を含んでいます。
これらの職務は、看護師、看護管理者、あるいは看護部門の責任者が担うことが多く、准看護師はこれらの業務に直接携わることは少ないです。
准看護師は、患者のケアに集中することで、看護の質を高める役割を果たしています。准看護師は看護管理者とは異なるスキルを持って医療現場に貢献しています。
私が経験した各職場における准看護師の役割と業務
准看護師が担当しない業務とは、あくまでも原則であり、各職場によって看護師・准看護師の業務分担は異なります。
これは組織の規模によって異なる傾向が見られます。
大規模病院
- 准看護師の人数が少ない
- 看護師との業務分担がはっきりしている
- 准看護師は基本的な業務を担当
小規模病院
- 准看護師の人数が比較的多い
- 看護師と同様の業務内容をこなす必要がでてくる
准看護師の給与は看護師よりも低く設定されているのが一般的です。同じ業務であっても看護師より低い給与設定がジレンマとなり、モチベーションの低下につながる場合もあります。
各職場によって業務分担は異なるため、自身の働き方に合致する職場を見つけることが重要です。
また、准看護師と看護師では教育期間や責任の範囲の違いがあり、それが給与の差となってしまうのも事実です。
この点を十分理解した上で、准看護師の仕事を選択することが大切です。
実際に私が経験した職場での准看護師の業務について解説します。
大学病院における准看護師の役割と業務
新規採用がなく配置が少ない准看護師
大学病院のような規模の大きい病院では新規での准看護師の採用は行っていません。古くから勤務している准看護師が、各部署に1~2名程度配置されているのが標準的でした。
大学病院における准看護師の業務
≪准看護が担当しない業務≫
- 管理職
- 委員会活動
- 教育担当
- リーダー業務
≪看護計画・各種書類作成≫
条件付きで担当します。
看護師との連名という形で担当することが決められていました。
准看護師が立案した計画や必要書類を看護師が共同で立案し、准看護師の署名とともに看護師の署名を書き加えます。
あくまで看護師が計画を立案し、准看護師は補助的な役割であるという体裁を取っています。
≪夜勤≫
条件付きで担当します。
時間帯責任者にはなないため、必ず看護師と組んで行う必要がります。
看護師と准看護師の業務が区別されている大学病院
大学病院では、看護職における准看護師の比率は非常に低く、看護師と准看護師の業務が明確に区別されていることが多いです。
准看護師は管理業務に関与することはなく、業務の負担は看護師と比較して少ないと感じます。
ただし、新規の採用を行っている大学病院は存在しないため、大学病院での勤務を希望する場合には、看護師の資格が必要となります。
私の勤務していた大学病院では、新規採用の看護職員が国家試験に不合格になると、准看護師の資格を持っていても関連病院・施設への配置へ変更されます。
大学病院では徹底して准看護師の新規採用はおこないません。
小規模病院
新規採用あり 看護職の3割程度は准看護師を配置
小規模の病院では大学病院とは違い、准看護師の新規採用も行っていました。各部署の看護職員の約3割は、准看護師でした。
中小規模病院での准看護師の役割
管理職 ⇒ ✕ 担当しない
委員会活動 ⇒ 〇 担当する
リーダー業務 ⇒ 〇 担当する
教育担当 ⇒ △ 基本的に担当しない。(限定的に担当)
≪看護計画≫
計画立案から評価まで一貫して担当していました。
看護師の指示のもとでという表現よりも、看護師に相談しながら業務を進めていくという表現の方が近いと感じました。
≪夜勤≫
担当します
時間帯責任者も担当します。
准看護師同士での夜勤や看護助手との夜勤もあります。
准看護師が担当する業務も増える中小規模病院
各病院の基準にもよりますが、看護師不足が深刻な中小の病院では、看護師と准看護師の業務をきっちりと分けてしまうと、看護師の負担が大きくなりすぎてしまうのが現状です。
私が勤務した中規模病院では、管理職以外は看護師との業務内容に差はありませんでした。
そのため、給与面での差が出てしまうことに対し、准看護師から不満の声をよく聞きました。
クリニック・診療所
新規採用に積極的 診療所・クリニック
クリニック・診療所では圧倒的に准看護師の割合が多く、というよりもほぼ准看護師で構成されています。看護師は子育て中のパート看護師が数名いる程度でした。
診療所・クリニックでは看護師と准看護師の業務の区別なし
常時医師がいる診療所・クリニックでは、医師の指示のもと診療の補助を行うのが主な業務となります。そのため、委員会や看護計画という業務自体は存在しないため、看護師が主となって業務を行う必要はありません。
私が勤務していたクリニックでは、准看護師が管理職を担当していました。
准看護師が管理職を行うことについて看護師からの不満は特にありませんでした。
長くクリニックに貢献してきた人が管理職に就くのは当然の流れだと感じていました。
福祉施設(老人ホーム デイサービス 訪問入浴)
常勤看護職員が必ず師も必要ではない
(特別)養護老人ホームや老人保健施設のように常勤の看護師が必ずしも必要とされない福祉施設では、しばしばパートや派遣の看護師が勤務する場合があります。
私も派遣看護師としてですが、老人ホームやデイサービス、訪問入浴などで働いた経験があります。
これらの福祉施設では、介護職がメインで利用者のケアを担当しているため、看護師は医療的な側面から利用者や介護職を支える立場としての業務を担当していました。
医療的側面から介護職員を支える。看護師准看護師の業務の区別なし。
福祉施設でも看護師・准看護師の区別なく、同じ業務を担当していました。
病院などと同じように難しい医療行為はないのですが、利用者の健康を支えるための業務を担当します。
具体的には、バイタル測定、看護日誌の記入、軟膏処置、血糖測定、インスリン投与、内服薬の管理、胃ろうからの栄養注入などとなります。
まとめ:准看護師は医療現場を支える重要な存在
准看護師は、医療現場において欠かせない存在です。看護師とは異なる役割を持ち、患者さんや医療チームを支えています。
准看護師は管理的な業務を行わない反面、患者のケアに集中できます。
患者に寄り添う時間を長く持つことで信頼関係を築き、患者に安心感を与えることが可能です。
しかし、病院の規模が小さくなるごとに、看護師との業務の差が縮まっているのが現状です。
准看護師であっても看護師と遜色ない業務が行える反面、同じ業務でありながら給与の差があることに不満を感じてしまうかもしれません。
求められる役割と業務の範囲を理解した上で准看護師を目指すことをおすすめします。