《准看護師廃止論》本当に仕事がなくなるの?20年現場経験者が解説【前編】
准看護師制度の廃止をめぐり、さまざまな議論が巻き起こっています。
「将来、准看護師の仕事がなくなるのでは?」
「資格を取っても無駄になってしまうのでは?」
このような不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、20年以上の現場経験を持つ私から見れば、そうした心配をする必要はないと考えています。
なぜなら、
- 廃止の行方はまだ決まっていない
- 仮に廃止されても、全員が仕事を失うわけではない
- 医療現場の人手不足は深刻で、今後も需要は高まる一方
この記事では、現場での実体験に基づき、 准看護師制度の現状と将来性について徹底解説します。
- 不安を解消し、准看護師資格取得への希望を持てる
- 自分に合った看護職へのキャリアを描くヒントがわかる
- 自信を持って行動の第一歩を踏み出せる
今こそ准看護師資格取得に向けて活動を始めるるチャンスです。ぜひ最後まで読んでください。
准看護師制度をめぐる現状と課題
戦後の医療を支えた准看護師制度:存続か廃止か【議論の行方】
1947年、戦後の深刻な看護師不足を打開するため、准看護師制度が誕生しました。
短期間で資格を取得可能な准看護師は、医療現場で即戦力として活躍し、患者さんへの手厚い医療サービス提供に貢献してきました。
しかし近年、准看護師制度の見直しや廃止が議論されています。
一方、准看護師が果たしてきた役割や、医療現場への影響などを考慮し、制度存続を支持する意見も根強いです。
准看護の未来を問う:それぞれの立場からみた廃止と存続
准看護師【消える職業?】看護師一本化への道
近年、医療の高度化や複雑化により、看護師に求められる知識や技術が高度化しています。
それに伴い准看護師の役割が時代に合わなくなってきたという意見があり、准看護師制度を廃止して、看護師に一本化するべきだという議論が起きています。
現在、准看護師制度の廃止に向けた具体的な動きありません。今後さらに論議が進んでいくものと思われます。
准看護師制度廃止に対する主な意見
看護師の専門性を高めるため
看護師と准看護師の役割分担が明確化されていないために、それぞれの専門性を十分に発揮できない状況がある
医療安全の確保
医療の高度化に伴い、より専門的な知識や技術を持つ看護師が必要であるという意見があります。
国際的な標準化
多くの国では看護師の資格は1種類のみである。国際的な標準化のためにも、准看護師制度を廃止すべきだという意見があります。
准看護師制度存続に対する主な意見
地域医療への貢献
准看護師は、病院だけでなく、診療所や介護施設など、地域医療において重要な役割を果たしています。
看護師不足の解消
准看護師は、看護師不足の解消に貢献しているという意見があります。
資格取得の多様性
准看護師制度は、さまざまな事情で看護師を目指す人にとって、選択肢の一つとなっています。
日本看護協会の意見 日本医師会の意見
日本看護協会の意見
准看護師は、看護を行うには看護師等の指示が必要な資格であり、現在の医療・国民のニーズに対応するには、教育内容、時間ともに不足しています。
日本看護協会では、准看護師制度が創設された当時から、一貫して准看護師養成の停止に取り組んでいます。
准看護師制度について | 看護職を目指す皆さまへ | 公益社団法人日本看護協会 (nurse.or.jp)
本会では、引き続き、准看護師養成の停止を目指し、准看護師養成所から看護師養成所への転換を促進するとともに、現在活動している准看護師の研修や進学支援に取り組みます。
准看護師制度の課題解決に向けた取組み | 看護職の皆さまへ | 公益社団法人日本看護協会 (nurse.or.jp)
日本看護協会は現在活躍している准看護師に対しての支援に取り組んでいます。
そして准看護師養成の停止を目指しています。
日本医師会の意見
地域の医療を看護師とともに支えているのが准看護師であり、現在約30万5千人(令和2年現在)の方が就業しています。准看護師は主に地域の民間中小病院や診療所において、重要な役割を果たしています。近年では、一旦社会に出た方が、あらためて看護を志す道としても注目されています。
地域医療を支える看護職員(准看護師を含む)の養成について|地域医療を支える看護職員(准看護師を含む)の養成について|地域保健|医師のみなさまへ|日本医師会 (med.or.jp)
地域医療を支える役割のある准看護師。
少子化により深刻な看護師不足に直面する日本では、社会人が看護師を目指せるルートが必要です。
その役割を担っているのが准看護師の養成です。
【看護師不足という危機】准看護師制度は医療制度崩壊の救世主となれるのか?
【准看護師制度廃止は医療崩壊への道?】37万人不足の危機を乗り越えるために
厚生労働省の調査によると、2025年には看護師が約37万人不足すると推計されています。
これは、医療現場全体における深刻な人手不足を意味しますが、特に地域医療や福祉の現場では、その状況はさらに深刻化しています。
現在就業している准看護師は約30万人と言われています。年々減少しているものの、全看護師に占める准看護師の割合は2割を超えます。准看護師の廃止は看護師不足のさらなる深刻化や医療崩壊につながるおそれがあります。
令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況gaikyo.pdf (mhlw.go.jp)
准看護師制度を廃止すると医療費が増加する
准看護師は看護師よりも人件費が安く設定されています。准看護師を廃止すると医療費が増加する可能性があります。
准看護師制度を廃止すると医療の質が低下する
准看護師は指示のもと療養の世話と診療の補助などができます。准看護師を廃止すると、看護師の負担が増加し、医療の質の低下につながります。
地域医療を支える柱:准看護師の役割と重要性
深刻化する看護師不足。その陰で、地域医療・介護を支える重要な存在として活躍するのが准看護師です。
看護師と役割を分担し、高齢者の生活支援や医療現場でのケアに貢献。彼らの存在なくして、地域での適切なケア提供は成り立ちません。
准看護師制度の廃止は、現時点では現実的ではありません。
今後は、制度のあり方を慎重に検討し、地域医療・介護における彼らの役割を最大限に活かせる環境を整備していくことが重要です。
20年間で激変!准看護師を取り巻く環境
20年前は500校超! 准看護師学校の今昔物語
20年前の准看護学校は全国に500校以上あり、看護師を志す人にとって身近な存在でした。
自宅から最も近い距離にあった大学病院付属の准看護学校の願書を取り寄せようとしたのですが、数年前に閉校になっていました。
この頃から大病院での准看護師の活躍の場が減りつつあったのですね。
現在の准看護学校は定員割れによる経営難より閉校が相次ぎ現在180校ほどの准看護学校があります。
正確な数は把握できませんが、日本准看護師連絡協議会 によるとそのうち50校程度の新規の募集停止が確認できました。
いまでは准看護学校は身近な存在ではなくなりました。秋田県、山形県、新潟県、福井県、岡山県では准看護師の養成校がないため近隣の県までの通学が必要となります。
埼玉県、福岡県では今でも10校以上の准看護学校が応募可能であるため、地域差が広がる傾向にあります。
これから准看護師を目指す人|一般社団法人 日本准看護師連絡協議会 (junkankyo.com)
准看護師学校:時代とともに変化するカリキュラム
准看護学校では時代に合わせて何度カリキュラムの変更が行われています。
私が在学中は午前中は病院で看護助手の仕事をして、午後は授業のスタイルでした。
現在では、午前授業と午後授業の両方の形態の学校があります。
授業が増えて、仕事との両立が難しくなっているんだね。
准看護学生:働きながら? 学業に専念? 変化する学生の選択
20年前の地域で働きながら准看護学校に通うのが一般的でした。教員からも働きながら学ぶような働きかけがありました。
正直言うと当時は半強制的に働きながらの通学を求められました。
現在は必ずしも働きながら学ぶことが前提とはなっていないようです。貯蓄や奨学金等で学費を捻出し、学業に専念するスタイルも選択することができます。
今は授業時間も増えて、働く時間があまりとれなくなっているようですね。
准看護師から看護師へ:2年課程の進学率3倍増! 進化する学びのスタイル
准看護師から看護師資格を目指すための2年過程ですが、20年前は約10%程度の進学率でした。
病院から奨学金を受けるにあたり、2年間の勤務(お礼奉公)が必要である学生が大半でした。また准看護師のまま経験を積むことを選択する人も多かったです。
働きながら学ぶことは厳しいけれど、在学中から正職員として身分が保証され、安いながらもアルバイトよりは高収入。
学生時代から勤務していた実績があれば病院からも信頼を得られるというメリットがありますね。
現在では病院に所属せず通学する人も多く進学率は30%程度まで上昇しています。
准看護学校での学びを忘れないうちに進学したかったので私はこのパターンを選択しました。
准看ルートからは最短での看護師資格取得ができましたが、とにかく学生時代はお金がカツカツでした。
また7年の実務経験の後に通信制過程での資格取得を目指す人も増えています。
通信制で看護師資格を取得した同僚もたくさんいます。
座学は自己学習を中心に、スクーリングは主に演習、実習は見学実習で単位を取得していくそうです。
大変だけど仕事を休まなくて良いところが最大の魅力!
【リアル准看護学生の日常】学校生活・授業・将来の夢を語ります!
おすすめの動画です。
現在准看護学校に通われている人のインタビューから、准看護学生のありのままの生活について知ることができる動画です。准看護師を目指す方が学校生活をイメージするために参考となる情報が満載です。
准看護師の活躍の場
統計によると20年前、看護師3人に対して准看護師2人が働いてました。
大学病院勤務時代、各病棟に准看護師が数名所属しているのが標準的な配置でした。
大学病院時代の同僚によると准看護師さんはほとんど病棟には勤務していないそうです。関連施設や外来などで活躍されているそうです。
当時一緒に働いていた准看護師さん達はベテラン揃い。
新人看護師の私にはとても頭が上がらない存在でしたが、そんな私にい一番優しく接してくれたのは、他でもない准看護師さん達でした。
現在は看護師5人に対して1人の看護師が働いている計算です。
現在私が働いている中規模の病院では数名程度の准看護師さんと一緒に働いています。業務内容はほとんど看護師と同一の内容です。
40歳代くらいの方は通信制で看護師資格を取得される方が数名います。時折看護助手さんが准看護学校に行かれるかたもいます。
同じ准看護師さんでも業務内容が同じだからこそ給与の差が不満に感じる人もいます。
逆に、同じ仕事ができるのだから、看護師資格はあえて取る必要がないと考える人もいます。
家庭の事情などで進学ができない人もいます。
皆さんそれぞれの考え方と、事情があるようです。
令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況gaikyo.pdf (mhlw.go.jp)