医療保護入院で退院請求を行えるのは誰?:看護師国家試験113回 午後64問
医療保護入院って、家族の同意で入院しているのに、患者さんが自分で退院をお願いできるんですか?
そうだよ。家族の同意で入院したとしても、患者さん自身にも退院を請求する権利があるんだ。
病気がまだ良くなっていないのに、退院してしまうことはないんですか?それが心配です…
安心して。精神医療審査会が患者さんの状態をしっかり確認して退院が妥当か判断するんだよ。
そうなんですね!患者さんの状態をちゃんと見てくれるなら安心です。
そうだよ。患者さんの安全や治療が最優先。退院が早いと判断されたら、退院は認められないんだ。
医療保護入院は、精神疾患を持つ患者が自分の意思で入院に同意できない場合に、家族の同意をもとに強制的に入院させる制度です。
この制度では、患者の自由が一部制限される一方で、重要な権利である退院請求も保証されています。
退院請求は、患者本人やその家族が都道府県知事に対して行うことができ、その適切性は精神医療審査会によって審査されます。
今回解説する問題は退院請求の権利が誰にあるのかを理解しているかを問うもので、医療保護入院の基本的な制度を理解するために重要です。
退院請求の権利や手続きに関する知識を確実に身につけましょう。
看護師国家試験113回 午後64問
都道府県知事に対し、精神科病院に医療保護入院となっている患者の退院請求をすることができるのはどれか。
1.警察官
2.検察官
3.患者本人
4.精神保健福祉士
解答と解説
1.警察官
✖ 誤り
医療保護入院において警察官は、退院請求を行うことはできません。
警察官が関与するのは措置入院のケースです。措置入院は、精神障害者が自傷や他害の危険があると判断された場合に、強制的に入院させる制度です。
警察官は、現場で自傷他害の恐れがある人物を発見した場合、その場で安全を確保します。危険性が高いと判断した場合最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報しますが、退院請求には関与しません。
2.検察官
✖ 誤り
医療保護入院において検察官は、退院請求を行うことはできません。
検察官が関与するのは、刑事事件や責任能力の有無が問題となる場合です。
たとえば、重大な犯罪行為に精神障害が関与しているケースでは、裁判において検察官が精神鑑定の結果などを踏まえて対応します。
3.患者本人
〇 正しい
医療保護入院において患者本人は退院請求をすることができます。
この退院請求は、精神保健福祉法第38条の4に基づき、患者自身が「退院すべき」と判断した際に、都道府県知事に対して請求することができます。
この請求は、第三者機関である精神医療審査会で審査され、患者の状況や治療の進捗が確認されるため、患者本人の意思を尊重する機会となります。
しかし実際に退院が認められるケースは非常に少ないのが現実です。
東京都の統計によれば、令和2年度のデータでは、退院請求が211件提出された中で、実際に退院が認められたのはわずか2件にすぎません。
このように、退院請求は制度上は認められていますが、その承認は厳格で、請求が通る確率は低いと言えます。
主な理由として、患者の病状がまだ安定していない場合や、自傷他害のリスクがあると判断されるケース多いことが挙げられます。
4.精神保健福祉士
✖ 誤り
精神保健福祉士は、患者やその家族が退院請求を行う際に重要なサポート役を担います。
精神保健福祉士自体が退院請求を行う権限はありませんが、患者や家族が制度を理解し、正しい手続きを進められるように助言や支援を行います。
精神保健福祉士は、退院後の生活支援や処遇改善の請求に関するサポートも担当し、患者の権利を守るために重要な役割を果たします
まとめ
今回の記事では、医療保護入院における退院請求の手続きや、誰が請求できるかを解説し、国家試験問題を通じて理解を深めました。
退院請求は患者本人に認められた重要な権利ですが、現実には承認されるケースが少ないです。ただし、これは患者の安全や治療状況を最優先に考慮した厳格な判断基準に基づくものです。実際、精神医療審査会が慎重に患者の状態を審査し、最適な判断を下す仕組みが整っており、患者の権利がしっかりと守られています。
この制度は、患者が不当に長期間入院することを防ぐための大切なプロセスでもあり、患者本人やその家族の意見が尊重される場でもあります。退院請求がすぐに認められるわけではありませんが、患者の状況に応じた適切なサポートが提供されることが保証されているため、制度全体が患者の安全と治療を重視したものとなっています。
この記事を通じて、医療保護入院制度における患者の権利と、その重要性についての理解がさらに深まれば幸いです。